COP28の期間中、ギリシャ・パビリオンでは、気候変動に関するパネルディスカッションが開催されました。脱炭素化を実現するために、スタートアップやベンチャー企業と投資家によるエコシステムの技術革新の実現や、海上輸送で2050年に向けて、ネットゼロへの取り組みが紹介されました。このパネルディスカッションに弊社マネージング・パートナー 練馬 洋が、パネリストとして出席しました。

 


 

2023年12月4日(COP28/ギリシャ・パビリオン/ドバイ)

脱炭素化に向け挑戦:スタートアップと投資家の協力によるエコシステムの技術革新構築に向けて

ナブテスコ・グループのDeepSea Technologies(本社:アテネ)は、脱炭素化を実現するための破壊的イノベーション、スタートアップとベンチャー企業、それを支える投資家の重要性についてディスカッションを行いました。

(写真左から) Kyriakopoulou, Geneiser, Freeman, 練馬

パネリストには、練馬 洋(株式会社ナブテスコ 執行役員、兼NTVマネージング・パートナー)、Rob Geneiser(EFT Partners [環境テクノロジー・ファンド] マネージング・パートナー)、Madison Freeman(ジョン・ケリー 米国気候問題担当大統領特使 元アドバイザー)らが登壇し、Alkistis Kyriakopoulou(DeepSea Technologies チーフ・オブ・スタッフ)がモデレーターを務めました。

練馬は、スタートアップから学ぶことへの意欲と重要性を強調しました。「起業家精神について、大企業はスタートアップから学び直す必要がある。そして、経験豊富なグローバル企業と活気のあるスタートアップがパートナーシップを築くことが重要だ」と語り、ナブテスコがDeepSea Technologies を買収した背景にある考えを説明しました。

EFT PartnersのGeneiserは、新卒者に、「革新的なテクノロジーは様々な問題を解決できる大きな力を持っている。今後の未来を左右する影響力を持つ環境スタートアップを、キャリアパスとして考えるべきだ」と勧めました。

パネル・ディスカッションでは、DeepSea Technologiesをナブテスコが買収したことよるパートナーシップの強化が大きな話題となりました。このパートナーシップは、スタートアップと既存企業の長所を組み合わせることで、気候変動に対する取り組みへの成果を向上させるケーススタディとなっています。DeepSea Technologiesの技術は、船舶の燃料消費を7%削減することが証明されており、世界の船舶の40%を顧客としている業界のリーダーであるナブテスコの支援により、この技術はグローバルに拡大することが期待されています。

練馬 洋(株式会社ナブテスコ 執行役員兼NTV MP)

登壇者たちは、気候変動に関する課題を克服するために、国境を越えた協力の重要性を強調しました。

練馬は、「技術開発のための資金調達に地域的な制限はあってはならない。そのためB2Bが主流であるディープテックの領域では競争はグローバルである。資金調達もグローバルであるべきだ」と語りました。

Geneiserは、「環境問題に効果的に取り組むためには、起業家精神と資金援助におけるグローバルな考え方が必要だ。欧米における気候テックへの投資は約60%減少しているが、基幹となる事業は引き続き注目されており、投資対象として価値がある。そして環境スタートアップは、資金調達のハードルはあるが、人類とって意義ある貢献ができる」と強調しました。

経済情勢における資金調達の減少という問題について練馬は、「日本におけるコーポレート・ベンチャー・キャピタルは、政府の支援と足許の緩和的金融政策の継続により、引き続き堅調である。さらに発展させるためには、ベンチャー・キャピタルやエクイティ・ファイナンスからの参入者を増やす必要がある」と訴えました。

そしてディスカッションでは、サステナビリティに取り組みことは共通の責任であると結論付けられました。

 


 

2023年12月6日(COP28/ギリシャ・パビリオン/ドバイ)

2050年までに海上輸送でネットゼロ: それは出来るのか?

ナブテスコ・グループのギリシャ企業 DeepSea Technologiesは、海運業界のリーダーや専門家を集め、2050年までに海運輸送でネットゼロを達成するための議論を行いました。この背景には、昨年、世界の船舶のCO2排出量は、過去最大となり、海運業界の将来について緊急の話し合いが行われるきっかけとなりました。

(写真左から)Kyriakopoulos, Tsantanis, Bodouroglou, Enger, Triantafyllos

パネリストには、Stamatis Tsantanis(Seanergy Maritime CEO)、Katerina Bodouroglou(STEM Shipping マネージング・ディレクター)、Andreas Enger(Höegh Autoliners CEO)、Vassilis Triantafyllos(ギリシャ・環境エネルギー省 エネルギーおよび鉱物資源に関する事務次官特別顧問/弁護士)らが登壇し、Konstantinos Kyriakopoulos(DeepSea Technologies CEO)がモデレーターを務めました。

国際海事機関(IMO)が設定した、2050年までにネットゼロを達成するために、2008年基準で2030年までに20%削減、2040年までに70%削減するという業界の目標について話し合いました。

AIを活用して船舶の燃料消費を最大7%削減する支援を行っているDeepSea Technologies CEOのKyriakopoulosは、本パネルディスカッションのモデレータを務め、2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量を20%削減する目標に関連して、既存の船舶の効率を改善する方法を議論しました。

Seanergy MaritimeのTsantanisは、「当社は、船舶にデジタル・ソリューションを採用した先駆者の一人であり、船舶効率を最適化するために、世界で最も進んだツールのひとつであるDeepSeaを活用してきた。そして2030年の排出量20%削減や、2050年のネットゼロも、適切な顧客とフリートラインナップを持つ船舶会社では達成可能だ」と述べました。

Höegh AutolinersのEngerは、「デュアル燃料、アンモニア、メタン対応の新造船への投資などによりHöeghは、IMOの目標に先駆けて2040年までにネットゼロ達成を目指す」と積極的な姿勢を発表しました。「荷主にとって私たちのような選択肢が重要であり、業界で先陣を切るのは良いことだと信じている。ゼロ・カーボン燃料はコストがより高いので、運用効率がさらに重要になる。そのためAIツールなどのデジタル・ソリューションの活用が必要だ」と語りました。

STEM ShippingのBodouroglouは、「わずかな速度の変化でも燃料消費量に大きく影響する。スピードを落とすことで、私たちは海上でのCO2排出量に大幅かつ直接的な変化をもたらすことが出来る。これまでのような早さで海上輸送が出来ず、経済的な影響があるかも知れないが、”この地球はペースを落としても対応できる”」と強調しました。

登壇者たちは、海上輸送の脱炭素化への大きな課題のひとつが、現在のRush-to-Wait現象(最初は速く航行し、港で順番待ちをする傾向)であると指摘しました。港湾での待ち時間がCO2排出量を増やしていることへの認識不足であり、2050年までにネットゼロを達成するためには、サプライチェーンを連携させることが極めて重要である。そして海運業界の持続可能で脱炭素の未来を実現するためには、協調、イノベーション、そして多面的なアプローチが必要であるという点で意見が一致し、ディスカッションは締めくくられました。