ナブテスコ・テクノロジー・ベンチャーズ
ジェネラルパートナー
練馬 洋
ナブテスコは、どのような特徴がありますか？
ナブテスコの製品は、ロボット用油圧ギア、商用車用ブレーキ、航空宇宙産業向け制御システム、自動ドアなどがありますが、共通しているのはモーションコントロールです。各分野で高いシェアを持っています。例えば、ロボット用油圧ギアでは、世界市場で60％以上のシェアを持っています。また、ボーイング社の777型機をはじめとするジェット旅客機に、アクチュエータ制御システムを供給しています。しかし、今後も成長し続けるためには、新しい技術を開発し、新しい市場に参入しなければなりません。これは簡単なことではなく、私たちは常に新しい技術と新しい機会を探しています。
現在、私たちが取り組んでいるソリューションは、ソフトウェアに大きく依存しています。そしてソフトウェア開発は、野心的で新しい技術を持つスタートアップが効率的に行っています。そこで、ナブテスコの技術エコシステムを構築するために、素晴らしいスタートアップを見つけたいのです。ナブテスコが生き残り、今後数10年にわたって成長を維持していくためには、このようなエコシステムを構築しなければなりません。
ナブテスコが最も必要としている技術ニーズは何ですか？
現在、当社が最優先で取り組んでいる技術は、油圧ギア、アクチュエーター、ドライブシステム、アディティブ・マニュファクチャリング、トライボロジー・コーティング、表面処理、各種センサー、コンピュータビジョン、AI、IoTです。しかし、思いもよらない革新的な技術に対抗するためには、既存の開発アジェンダ以外の技術も模索しなければなりません。私たちは長い目で見て既存のビジネスニーズの外にある、新しいタイプのイノベーションを探しています。
なぜ、ナブテスコのCVCを米国ではなく、ヨーロッパに設立したのですか？
シリコンバレーはソフトウェア開発の中心地です。B2CやEコマースなどに力を入れています。しかし、我々が求めている産業用アプリケーションの開発は、日本やヨーロッパの方がはるかに進んでいます。そのため、私は米国西海岸ではなく、スイスのチューリッヒにCVCを設立することにしました。
エメラルドをパートナーに選んだ理由はなぜですか？
エメラルドは企業に優しいVCです。一般的にVCは利益を上げることだけに集中し、投資家の声を聞きたがらない。それは私が探していたものではありません。必要としていたのは、社内の複雑で厳しい声や、自分たちが世界一だと信じている日本のエンジニアの声に耳を傾けてくれるパートナーでした。日本企業と仕事をするには、忍耐強く、寛大で、文化を理解しないといけません。このようなことは、例えばアメリカではとても難しいことです。対照的にスイスは多くの言語を話し、強い隣国に囲まれた小さな国です。エメラルドのスタッフは、アメリカ人、スイス人、イギリス人を中心に、ドイツ、フランス、イラン、ポーランドなど、多様性に富んでいます。また、女性従業員も指導的な役割を担っています。このような社風の中で、積極性と協調性がうまくミックスされています。それが私が彼らを選んだ理由です。
“投資に対する迅速なリターンよりも、スタートアップとのコラボレーションに興味を持っています。”
スタートアップとは、どのような関係を築こうとしていますか？投資以外の形態も考えられますか？
私は様々な種類の関係に全面的にオープンです。従来の投資よりもスタートアップのエコシステム構築に重点を置いています。投資はあとで考慮してもいいのです。私たちは投資ですぐにリターンを得ることよりも、スタートアップとのコラボレーション、協業に興味があります。もちろんスタートアップが資金調達を必要としていれば、私たちは喜んで投資しますが、それは前提条件ではなく、協業が優先されます。
ナブテスコがスタートアップにとって良いパートナーである理由は何ですか？
ナブテスコは、日本市場のいくつかの分野で優位に立っており、日本市場への進出を支援できます。外国人の日本市場参入はとても複雑です。日本人は保守的で、よく知らない人との接触を警戒します。また、ナブテスコは日本では珍しい「系列にこだわらない」という点でも注目されています。あらゆる産業グループとの関係を構築できるナブテスコは、理想的なパートナーだと言えます。当社がパートナーになることで、これまでにないチャンスがたくさん開けます。また、日本企業として、製造や品質管理に長けています。多くのスタートアップにとって、困難なスケールアップのお手伝いをすることができるでしょう。
どのようなスタートアップを求めているのでしょうか？
最も重要なのはテクノロジーそのものです。とはいえ、アジャイルで起業精神が旺盛な企業を探しています。投資を検討する際には、その会社が優れた経営をしているかを確認する必要があります。技術だけに集中するのではなく、経営者としてのスキルを身につけるために、学習できる柔軟性を持っていなければなりません。これが重要です。企業に投資することは、その企業が生き残り成功し、利益を上げる必要があります。それには優れた経営陣が必要なのです。